風立ちぬベンチ
2017年 10月 24日
[Poto] 尾瀬国立公園:会津駒ケ岳
尾瀬の思い出
風立ちぬと言えば秋ですね。『秋色の尾瀬で遊ぶ』という素敵なキャッチコピーとともに
山渓の表紙を飾った 金色の湿原に青い瞳のような池塘を散りばめた写真に心惹かれたのは
いつだったでしょう。
最初の尾瀬デビューは18歳の夏、「遙かな尾瀬」いう言葉に憧れ古びた路線バスに揺られ
登山口の鳩待ち峠に着きました。
そこから山の鼻へと一気に下り、お化けになった水芭蕉に逢いました。
まだ高山植物の名前も樹木の名前も知らぬ頃でした。
川床まで透き通った川上川にかかった一本の橋、その橋を渡ると森の感じが変わりました。
ここから尾瀬が始まるんだ!!尾瀬への期待に胸が膨らみました。
その時は時間が無くて、ほんの少し湿原を歩いただけで帰らなければなりませんでした。
その次は19歳の春、残雪の尾瀬ヶ原と尾瀬沼に行きました。今も忘れられない思い出です。
そして、やっと秋色の尾瀬に訪れることが出来たのは30年近い年月を経てからでした。
山の鼻を出て、研究見本園を巡り一番奥のベンチに腰を下ろして湿原を見渡すのが好きでした。
木道の彼方には美しい白樺の拠水林、そしてその奥には青い燧ケ岳、後ろには錦秋の山肌を
美しく染め上げた至仏山、湿原の草紅葉が暖かなキツネ色に輝いてイワショウブの紅い実や
エゾリンドウの青い花が優しげに揺れているのでした。
その時、涼やかな一陣の風が至仏山の山肌を滑り降りてきました。
湿原はさやさやと金色の波を立てたのでした。秋色の風が優しく頬を撫で、
髪を揺らして行った時、“風立ちぬベンチ”という名前が浮かびました。
尾瀬には、こんな風にして名付けた名前と場所がたくさんあります。
面影橋、想い出橋、再会の池塘、イモリの池、黄昏ベンチ、夕涼みベンチ、静かなるベンチ
月影橋、星影橋、追憶の桟橋、ルビーの小路、水芭蕉の丘、青い瞳、水琴窟の入江、尾瀬ヶ原湖…
この名前をご存知の方は何人ぐらいいらっしゃるでしょうね?
かつて尾瀬の友人たちは、この名前を愛してくれました。
とくに風立ちぬベンチは思い出の名前です。今は亡きshinさんが愛してくれた名前です。
その名前を、新しいブログの名前にしてみました。
今年旅立たれた和風さんと、初めてお逢いしたのは想い出橋でした。
shinさんは、また尾瀬に行けると良いねと言ってくれていました。
shinさん、いつか風立ちぬベンチで逢いましょう。
和風さん、いつかきっと想い出橋で逢いましょう。
そして若葉さん、永遠のお別れをしてから幾年月が経ちましたか?
いつの日か再会の池塘で逢いましょうね。