天目山  (三つドッケ)

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昨年の記事になりますが、ご容赦ください。


12月初旬、初冬の澄み渡った空気の中、わたしたちは久しぶりに日原に向かっていた。
行先は天目山(三つドッケ)だった。この日は研修登山という事で、マイナールートではあるが、
倉沢谷に降りる棒杭尾根がイベントで使用可能かどうかの調査・検証をするための登山でもあった。
棒杭尾根は、途中までは登ったことがあったが、その先がどのようになっているのか未知な領域だった。
未知なルートの開拓は、わくわくするような要素があり、わたしにとっては心躍る登山でもあった。

この日は山ガイド3人で登る。イベントで45名のお客様を案内するのと違って気楽なものだった。
平日という事もあり、奥多摩駅前の日原行のバスに乗り込んだのは、わたしたちの他は数人の登山者のみ。


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東日原でバスを降り、植林帯の中の登山口から登りはじめた。登山標識も風雨にさらられ年季が入っている。
こうゆう素朴さが奥多摩の山の風格だとわたしたちは思っている。



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急登の植林帯は、ご多分に漏れず奥多摩の山の定番だ。少し息を上げつつ登りあげると広葉樹の森となる。
後から登って来たバスで同乗していた高齢の方と挨拶してすれ違った。
その方は、何やら漢詩のような言葉を詠みながら登っておられた。
『詩を吟じていたね!』とリーダーが振り返り告げた。ほんの少し微笑んでいる。
「ええ、吟遊詩人のようだね。」とわたしも微笑む。
漢詩、あるいは枕草子か、それとも芭蕉の奥の細道だろうか?聞き取れなかったが、高尚な趣味だと思った。

もうすっかりと落葉した森は、木立の間から青空が透かして見える。清々しさに振り仰ぐ。
『これを空透かしと言うそうだよ。』と、先輩が教えてくれた。「空透かし、素敵な言葉ですね!」
わたしたちは、そんな光景に出逢う度、『空透かしだね!』を繰り返した。


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枯葉を踏んで歩く尾根道、空が広くて気持ちがいい。奥多摩の山を良く知る頼もしいリーダーの後姿。


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奥多摩の名峰、大岳山の稜線が見えてきた。その向こうには薄青く丹沢山塊が見える。


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岩場の痩せた道もある。岩で歩きづらい上に、足下は切れ落ちていて足を滑らせたら大変だ。
『景色に気を取られると危ないな』『イベント時には注意が必要だね。』と話し合いながら行く。



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滝入りの峰、ここまで来ると反対側の展望も開ける。冬場は風の通り道でもあるが、好きな道なのだった。


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天目山から続く、県境尾根が見渡せる。大栗、七跳、酉谷、水松、芋の木、雲取、奥多摩の最も深部だ。
どれがどのピークなのか良く判らないのだが、いつかは歩いてみたい道だった。
けれど、小川谷林道が通行止めの現在では、よほど屈強な登山者で無い限り踏破するのは難しい。
体力が無いわたしには到底無理そうだった。



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滝入りの峰あたりから、ミズナラやブナの巨樹が現れ始める。大空に幹を広げ風吹きわたる尾根に佇む。



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緩やかにアップダウンを繰り返し、いくつもの小ピークを踏んでいく。
ピークを目指す度、まるで空へと続いているようだと、心の中でつぶやいた。



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雨露になりながらも、威風堂々と佇むブナ。木々の逞しい姿に出会う度、こころから感動する。



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ぐわんと反り返るようなミズナラの巨木、やはり巨樹の姿には魅かれてしまう。




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東日原と一杯水を指し示す道標、風雨に晒され文字は消えかけている。



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陽だまりの痩せ尾根、木々を避けて通るような踏み後の道、結構好きだ。



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根張りが美しい白ブナの巨木。ブナって時々茶色の葉を遅くまで落とさずにいることがある。
この樹も枝先に枯れ葉をまだ残していた。こんなに風通しが良い場所にいるのに不思議だ。


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芽吹いたのはミズナラの実だろうか?



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まだ若いミズナラの林



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金属色の美しい幹のナツツバキ、かなりの巨木だ。



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一杯水小屋に着いた。ここで下山してきた登山者と会う。今日すれ違ったのは2人の登山者のみだ。


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緩やかに見えるが、結構急峻な道を登る。



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空洞になりながらも、生命力逞しい樹。
通り過ぎる時、リーダーは軽く触れた。なんと言葉を交わしたのだろうか?
わたしも、巨樹に出逢うと必ずその幹に触れてみる。偉大な樹に敬意を表しながら…


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1000m以上の山々に、先日降った初雪が日影に残っていた。


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三つドッケの一峰を踏んだあと、目指す二峰が見えて来た。


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天目山(三つドッケ)は、名前の通り三つのピークのある山で、山名標は2つ目のピークにある。
とても見晴らしのいい山でこの日は素晴らしい快晴だった。大変気持ちがいい。



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360度の大パノラマ


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蕎麦粒山、川苔山方面


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奥多摩三山の大岳山、御前山、三頭山が一望できる。


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やっぱり秀麗な富士山が見えると嬉しい。


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蒼空に白くに輝くダケカンバ。


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本当は、この先の三つ目の頂きを踏んでハナド岩まで足を伸ばす予定だったが、少し時間を押している。
もう一つの目的の棒杭尾根の調査が残っているので、今回はここまでとして下山を開始した。



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一杯水避難小屋まで下山し、ここから蕎麦粒山方面へのルートを取ることになる。


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この銀色に輝く樹皮はミズメだと思う青空との対比が美しく大好きな樹なのだった。



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透けたハリギリの葉にリーダーが目を止める。いいなぁ、こういうの。



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霜柱をザクザクと踏んで歩いた。冬の足音が聞こえた。



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2時近くなってくると急に山の天気は変わるものだ。
先ほどまでの青空に白い雲とは変わって鉛色の雪雲が空を覆い始めた。
寒々とした森の中、時折どこからか運ばれた風花が舞う。



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リーダーと先輩の後を追うように歩く



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この尾根が棒杭尾根らしい、出だしは良さそうに見えたが…


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直に、落ち葉に埋もれた急斜面の下りとなる。
道標も無く、植林帯と広葉樹の森の境目をひたすら下って行く。
時おり、道が不明瞭になったり岩ゴロな歩きづらい道となったりした。

木の根や岩などに掴まりながら三点確保で下って行くためここからは写真無し。
そろそろ終わりかなと何度か思いかけては裏切られ似たような道をひたすら下った。



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やっと、明確な植林帯の道へ、するとほどなく林道へと出た。



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倉沢谷の深部、元はここに集落があったそうだ。




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崩壊しかけた橋が往時を物語っている。



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3時半を過ぎていたので、4時台のバスは無理そう…
ほんのりと暮れかかった空を振り仰ぎ、車道をひたすら歩く。



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いくつもの小滝を眺めつつ…



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源五郎滝を過ぎる頃には短い日は山影に沈み、辺りは夜の闇が忍び寄ってきた。
その後、とっぷり陽が暮れた真っ暗闇のバス停で40分、最終バスの到着を待つことになった。
これが1人じゃやりきれないが、仲間があるのは心強いものだ。それにしても寒かった。
体の芯まで冷え切った頃、やっと最終バスが来た時は、心底、ありがたかった。

わたしたちの他にはだれ一人乗っていない。『寒かったでしょう。』との車掌さんの言葉に
『はい、冷え冷えです~!バスが待ち遠しかったですよ。』と答えたわたしたちだった。

結局、本日の研修結果は、棒杭尾根はイベントには不向きである、でした^_^;




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by kazetatinu-h | 2018-01-24 18:52 | | Comments(0)

草紅葉が色づき始めたある日、湿原の奥の小さな木のベンチに風が座っていました。遠い日の記憶を呼び覚まして…


by sizuku
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